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却下された申し出からみえること

「有害図書」指定に関する都民の申し出は、確かに事務局に届いています。けれども、そのほとんどが却下されています。ここでは、却下された申し出とその理由から、この制度が実際にどう運用されているかを見ていきます。[1]

都民の申し出は、ほとんど通らない

約8年間で、都民から寄せられた有害図書の申し出は278。そのうち審議会に諮問されたのは2件だけで、指定に至ったのは実質1作品です。残りは、その大半が審議会にかけられる前に、事務局の段階で却下されています。

いっぽう、本来「指定すべきか否か」を決めるはずの審議会では、諮問された図書は確認できたかぎり一度も否決されず、100%指定されています(詳しくは知る②)。

何を指定するかを実際に選んでいるのは、判断の場に見える審議会の採決ではなく、その手前の事務局の段階なのでしょうか。[2]

却下の物差しが、
条文にない言葉だった時期がある

申し出を却下するなら、照らすべき基準は条文に決まっています。「著しく性的感情を刺激する」かどうかは、施行規則 第十五条第1項第一号(イ・ロ)が定めています(→条文ページ)。

ところが第712〜733回(令和元年秋〜令和4年初頭・却下60件のうち11件)の却下理由には、条文にまったく出てこない言葉がはっきり現れます。

「これまでの指定図書類と比較して」、著しく性的感情を刺激するとはいえない。

第694〜711回

「(施行規則の)基準に該当しない」

第712〜733回(11件)

「これまでの指定図書類と比較して」
(条文にない言葉)

第747回以降

「著しく性的感情を刺激するとは言えない」

事務局で確認したところ(中略)これまでの指定図書類と比べて著しく性的感情を刺激するとはいえず、該当しないと判断

718回 却下理由より(2020年9月

718回の議事録を見る →

事務局で確認したところ(中略)これまでの指定図書類と比較して著しく性的感情を刺激するとはいえず、諮問には至らないと判断

729回 却下理由より(2021年10月

729回の議事録を見る →

事務局で確認したところ(中略)これまでの指定図書類と比較して著しく性的感情を刺激するものとはいえず、諮問に至らないと判断

733回 却下理由より(2022年2月

733回の議事録を見る →

しかし、条例にも施行規則にも、過去に指定した図書と比べる、という基準はどこにもありません

これまで指定されてきたのは、性器の修整や体液の描写などきわめて露骨なコミックがほとんど。その過去と比べるということは、つまり過去に指定されたものと同じくらい露骨でなければ通らないということです。[3]

現在は、却下理由としてこの言葉は使われていません。しかし、一時期だけ条文にない基準が却下の根拠として確かに用いられていました。その事実は重要です。

街なかの大看板も「性的ではない」とされた

同じ「著しく性的感情を刺激する」という基準は、図書だけでなく屋外の広告物にも定められています(施行規則 第二十八条「有害広告物の基準」)[4]。しかもその文言は、図書の基準(第十五条第1項第一号)とまったく同じイ・ロです。

実際、街なかの大きな看板をめぐる申し出で、この基準がどう使われたのかが記録に残っています。

申し出内容の要旨(第762回・2025年9月/電話による申し出)

大きな交差点の角のビルの屋上に設置されている看板が卑わい。全裸で四つんばいになって、お尻を突き出している巨乳の少女のキャラクターが描かれている。条例に基づき、指導等できないかという内容

却下理由

事務局が当該広告物を現地で確認したところ、著しく性的感情を刺激するとは言えないものであったため、条例施行規則第二十八条の指定基準に該当するとは言えず、諮問には至らないと判断。
第762回の議事録を見る →

※この看板がどの広告かは議事録に記載がなく、当サイトでは実物を確認できていません。上の描写は申し出人によるものです。

申し出人の描写どおりであれば、条文の言葉(「全裸・半裸の姿態」「卑わいな感じ」)にまっすぐ重なって見える看板です。それでも、事務局の現地確認では「著しく性的感情を刺激するとは言えない」とされました。

「東京都青少年の健全な育成に関する条例」は、18歳未満の子どもたちを守る条例のはずです。
果たして今の運用で子どもたちは本当に守れているのでしょうか。
運用は適切なのでしょうか。
都民の声は届いているでしょうか。

図書の申し出はもちろん制度の運用改善についても、意見を送ることができます。

出典・注記

  1. 集計方法の詳細は議事録ページを参照してください。各回の議事録は個別ページから確認できます。
  2. 諮問・指定された2件は第715回の議事録に記録されています。残る276件は、大半が事務局の段階で「指定基準には該当しない」として却下されています。
  3. 第694〜766回の議事録で、申し出の却下案件は60件(生の申し出は278件。同一人物の反復申し出を1案件にまとめた数)。「これまでの指定図書類と比較して」という文言が確認できたのはこのうち11件で、いずれも令和元年秋〜令和4年初頭の処理分に集中しています。多くの却下理由は条文どおり「著しく…とは言えない」と記されていました。
  4. 看板の基準=施行規則 第二十八条(有害広告物の基準。図書の第十五条第1項第一号と同じイ・ロ)。東京都例規集

リンクは2026年6月時点。条例・自治体ページ・指定一覧は更新されることがあります。